現役薬剤師が語る科学的根拠に基づく快眠法

今回は体験談です。現役薬剤師が語る科学的根拠に基づく快眠法です。
みなさんは「睡眠」をしっかりととれていますか?

寝つきが悪かったり、睡眠が持続しなくて夜中に目が覚めてしまったり、日中眠気が残っていてあくびばっかりしている、なんて方も多いのではないでしょうか。

睡眠の質は翌日のパフォーマンスに大きく影響します。睡眠のメカニズムを理解し、睡眠の質を上げる方法を知ってより良い睡眠を得られるように意識していきましょう。是非ご覧ください。

目次

  1. 最初に私の不眠体験について
  2. 結局、不眠の期間は1ヶ月ほど続きました
  3. 睡眠のメカニズムについて
  4. 快眠のために意識すること
  5. 抱え込まずに発散する

最初に私の不眠体験について

私自身は寝つきはいい方であり、布団に入ればそんなに時間がかからずに睡眠に入ることができます。途中で目が醒めることもほとんどなく日々快眠と言えるような状態ではありますが、実は不眠状態に陥った時期があります。

 

学生時代の話なのですが、自身の進路や学業に対する心配、不安、恋愛に関する悩みなど、いろいろなことが重なってしまった時期がありました。

 

いくら運動をして肉体的に疲れていても、勉強で頭を使っても、アルコールを摂取しても全然眠ることができず、ベッドの上で何時間も過ごしているようなことがありました。

 

ひどい時は23時頃に布団に入り、朝の7時くらいまで寝付けなかったこともあったくらいです。朝方になってやっと眠くなってきて、眠ってしまうので大学の授業には参加できない、という最悪の状況に陥ってしまいました。

 

授業が毎日朝からあったために、朝一の授業は出席できない日も増えてしまい単位の取得も危うくなり更に不安感が増していきました。

 

その時はさすがにどうにかしなくてはいけないと思い、上に書いてあるようなことをすべてやりました。寝つきを良くするような薬を飲んだこともあったのですが、うまく効果が発揮されず有効な手段ではありませんでした。

 

焦りが募り寝ようとすればするほど、逆に目が冴えてしまう負のスパイラルに陥ったことを思い出します。

結局、不眠の期間は1ヶ月ほど続きました

結局、不眠の期間は1ヶ月ほど続きました。今思い返すと、過度の心配や悩みで精神的に張り詰めていたような状態が続いていたことが不眠に陥った原因なのではないかと思います。

 

様々な悩みが生じやすい昨今、当時の私と同じように悩み事を抱えて常に頭が痛いような状態の方はたくさんいらっしゃるのではないでしょうか。極限まで悩んでしまうと睡眠が侵され、健康に影響が出てしまいかねません。

睡眠のメカニズムについて

このような体験から、睡眠のメカニズムについて研究しはじめました。私たちは日々生活をするなか、夜になると眠くなり睡眠をとり、また夜が明け明るくなるタイミングで目覚めます。睡眠は「睡眠欲求」と「覚醒」のリズムからなり、それらがバランスよく保たれることで健康的な睡眠を確保することができます。

 

睡眠のリズムは夢を見る浅い眠りの「レム睡眠」と深い眠りの「ノンレム睡眠」からなり、約90分のサイクルで交互に変動します。

 

浅いレム睡眠のタイミングで起きるとスッキリとした目覚めになり、深い眠りのノンレム睡眠時に起きると眠気が残った状態での起床になります。目覚ましアラームをかける時は睡眠から4時間半後、6時間後、7時間半後あたりを目安にするとスッキリと目覚められると思います。

 

脳の温度は日中の活動時間帯は高くなっていますが夜になるにつれ下降していきます。人間の眠りは温度の変化によって引き起こされるので、脳が冷えてくると眠気を感じ同時にメラトニンと呼ばれる睡眠ホルモンを分泌して入眠を促します。

 

メラトニンは光と浴びるとうまく分泌されないので照明などには注意が必要です。

快眠のために意識すること

生活習慣

睡眠の質には、日々の生活習慣も関係してきます。睡眠の質を上げて快眠を得るためには生活習慣にも気を配る必要があり、気をつけるポイントについて説明します。

 

①運動

国内外の様々な研究において、日頃から運動する習慣がある人は不眠が少なく、運動不足がちな方に不眠が多いことが明らかにされています。1度のみの運動ではなく、良質な睡眠を得るためには習慣的な運動が必要になります。

 

スポーツなどを行なった日はよく眠れたという経験はないでしょうか。日常的に運動している方は、そうでない方と比較して中途覚醒(ちゅうとかくせい:夜中や明け方に目が覚めてしまい眠りにつけなくなること)が少ないというデータがあります。

 

純粋に疲労により体が休息を欲して眠りにつきやすいこともありますが、睡眠時の「体温の変化」も影響しています。人間の体には日中の活動時は体温が高く、夜間の就寝時付近には低くなる習性があります。運動をすることで体温が上昇し、汗をかくなどで熱を放出して体温が低下してくることは人間の睡眠に対して理にかなっていると言えます。

 

ではどの程度の運動を行うことが効率的なのでしょうか。日常的に行うことを考えるとあまり激しい運動はお勧めできません。長く続けやすいものとしてはウォーキングやジョギング、スイミングなど心肺に負担がかかりすぎない有酸素運動があげられます。無理なく続けられる1日20~60分程度の運動を、週に2~3回の目安で行うよう意識していきましょう。

 

 

②入浴

睡眠状況を改善させる生活習慣の一つとして「入浴」もあげられます。上記でも説明したように人間は体温が低くなるタイミングで眠くなると言われています。就寝前の入浴は一時的に体温を上げることができ、時間ともに徐々に低下して布団に入る頃には程よい状態になっているという仕組みになっています。

 

ただお湯に浸ればいいというのではなく、38~40℃前後のぬるめのお湯で15分~30分ほどの時間を目安に入浴してみてください。冷えやすい方やほてりやすい方によって入浴のタイミングは変える必要がありますが、就寝前2~3時間前の入浴が最適と言われています。冷えやすい方に関しては就寝の直前のタイミングでの入浴でも問題ないでしょう。

 

注意すべきなのは温度です。ぬるま湯での入浴は副交感神経を優位にし、血圧や心拍数が低下しリラックス状態にしてくれます。逆に42℃以上の高温での入浴は交感神経を高ぶらせてしまい、興奮状態になるため就寝前の入浴法としては適していません。入浴時の温度や入浴時間にも配慮してみてください。

 

睡眠環境

良質な睡眠を得るためには睡眠環境を整えることも重要です。睡眠時の影響が出る可能性のある要因について説明していきます。

 

①光

睡眠のメカニズムの段落で説明した眠りを促進させるホルモンである「メラトニン」は光が多く照射されている環境下だと分泌が抑制されてしまいます。その結果睡眠が乱れてしまうことにつながります。

 

知らずのうちにやりがちなのが就寝前のスマートフォンの操作です。スマートフォンやパソコンなどLEDを使用した端末からの光には「ブルーライト」が使われています。ブルーライトとは可視光線の中で紫外線に近い、エネルギーの高い光のことで、エネルギーが高いため角膜や水晶体(レンズ)を通過して網膜にダメージを与える可能性が近年問題視されています。

 

人間の体は紫外線に含まれているブルーライトを浴びることで体が日中の活動モードに切り替わります。ブルーライトにはその役割がありますので、就寝前にブルーライトを目に取り込むと刺激を受け、睡眠に入りにくくなってしまいます。就寝前の1時間ほど前からは極力ブルーライトの刺激を避けるように意識しましょう。

 

②温度・湿度

快眠を得るためには寝室の環境も意識する必要があります。快眠に必要な寝室の環境としては室温が33℃前後、湿度が50%と言われています。季節によって温度や湿度も変わってきますので、空調や衣類、布団の種類などで調節していく必要があります。

 

 

③音

睡眠中は40dBA(デシベルエー)以下の音が望ましいとされており、50以上になってくると睡眠が害されると言われています。40以下の目安としては図書館や会議室での音環境です。かなり静かであることがわかります。50以上は換気扇や室外機、洗濯機などの発する音になってくるので、テレビ等をつけっぱなしにして眠るのはやめましょう。

食事内容

睡眠の質を上げるには食事の内容も意識すると良いでしょう。摂取すると良い栄養素について先に説明します。

 

①トリプトファン

必須アミノ酸の1種であり、上記で説明した睡眠ホルモンのメラトニンや精神の落ち着きをもたらしてくれるセロトニンというホルモンの元となる成分です。豆腐や納豆等の大豆製品、チーズや牛乳等の乳製品、バナナ等に豊富に含まれています。体内で合成されるアミノ酸ではないため、しっかりと食品から摂取する必要があるので注意が必要です。

 

②グリシン

アミノ酸の1種で牛肉、豚肉、鶏肉の動物性のタンパク質やカニやエビなどの魚介類に豊富に含まれます。グリシンを摂取すると末梢の血流を増加させて、熱の放射を促してくれて睡眠の条件である体温の低下を進めてくれます。

 

③GABA

アミノ酸の1種で、ストレス抑制効果や神経の高ぶりを抑えてくれる働きがあるので睡眠の質改善が見込めます。最近ではGABAを多く含んだチョコレート等も販売されており以前に比べると気軽に摂取しやすくなっています。

 

抱え込まずに発散する

あとは、自分一人で悩みを抱えず、周りにいる誰かに相談できるような関係性を築くことも重要だったのかなと思います。

 

当時の私は強がったり恥ずかしがってしまって誰にも相談をせずに一人で抱えていました。結局そのプライドが足枷となって自分の首を絞めることにつながっていたということに気づけていなかったんです。

 

快眠法と併せて、悩み事等ある場合は抱え込まずに発散するようにしています。家族や友人に話を聞いてもらうようにしています。私はたまたま1ヶ月という期間で不眠から逃れることができましたが、何年もの長い間悩まれている方もいらっしゃると思います。

 

不眠の状態は経験者にしかわからない精神的・肉体的な辛さがあります。実際に不眠で悩まれている方は周りの方を頼っていいと思いますし、もし周りに悩んでいる方がいたら話を聞いてあげるなど手を差し伸べてあげてください。それによって救われる方もいらっしゃいます。

 

私の経験が参考になるかはわかりませんが、同じように悩んでいる方の一人でも解決できる手掛かりになればと思います。

この記事を書いた人

SLEEP BASE MAGAZINE 編集部

編集長の安田 信達です。「快眠器具」を開発研究しています。趣味は「運動」です。筋トレにはまっています。自分自身の体験も活かしながら「睡眠」と「運動」の関係を日々研究することに励んでいます。


副編集長の安田 明道です。眠りがいかに大切なものかをご理解頂くと共に、睡眠に悩む方々に”楽しい眠り”をご提供させていただきます。

SLEEPBASE MAGAZINEが、読者様の睡眠を豊かにすることにお役にたてたら幸いです。
編集部一同 https://sleepbase.jp

この記事が気に入ったらいいね!しよう

現役薬剤師が語る科学的根拠に基づく快眠法