コロナ診療で不眠となった医師

医療現場から医師の生の声が届きました。「30代男性、医師歴10数年目の内科医です。専門は呼吸器科・感染症科です。現在は、新型コロナウイルス感染症診療にも携わっています。現場での声を通して、皆様に現実をお伝えしたいと思います。また、コロナ診療で不眠となった私が、どうやって克服できたか、ご紹介したいと思います。」早速見ていきましょう。

目次

  1. コロナ診療で不眠に陥ってしまった
  2. 突然訪れたコロナ
  3. 重症患者の受け入れによる疲弊と苦悩
  4. コロナの再来
  5. 身体と心の健康から不眠を克服へ
  6. コロナで不眠に苦しむみなさん

コロナ診療で不眠に陥ってしまった

医師歴10数年目の内科医です。専門は呼吸器科・感染症科です。現在は新型コロナウイルス感染症診療にも携わっています。これまで主に教育病院や大学病院、一般病院に勤務してまいりました。

 

また、大学院で医学研究を行い、医学的な知見の発展にも貢献してまいりました。研修医や若手医師の教育にも携わっておりました。今年度はコロナ診療にも携わり、臨床研究にも自身が主導で参加しております。最近では当方コロナウイルス感染症対応をしており、一般の方も不安を感じるほどの拡大を見せております。

 

睡眠に関しては、睡眠外来(主に睡眠時無呼吸症候群)の診療をしており、普段から睡眠についての医学的知識に精通し、睡眠に悩まれる患者さんのお話しを聞くことが多くあります。そんな私もコロナ診療で不眠に陥ってしまいました。

突然訪れたコロナ

2020年1月のことです。中国で未知のウイルス感染症が拡がっているという報道が日本でなされました。2月になり、クルーズ船の新型コロナウイルス感染者を日本でも受け入れを始めました。

 

当初はここまで日本いや、全世界を脅かすとは思っていませんでしたが、2月下旬頃から勤務する病院でも受け入れ体制について話が出るようになりました。当病院での患者受け入れ第一例は3月になって行われました。

 

当初は未知のウイルスであり、混乱や誤解もあって大きな緊張感とともにコロナと遭遇したことを覚えています。以後、この第一波において複数のコロナ患者の診療を開始しました。

重症患者の受け入れによる疲弊と苦悩

暖かくなった春のことです。夕方に他院からコロナ入院患者の病状が悪化しているため、転院を受け入れてもらえないかという依頼がありました。当時、新型コロナウイルス感染症に対する明確な治療法は確立されておらず、数少ない治療の選択肢としての抗ウイルス薬が投与されていました。

 

しかし、治療にもかかわらず悪化しているのです。不安を抱えながら患者さんが転院搬送されてきました。まだバリバリ働いていてもともと特に病気もないような患者さんでしたが、当院に搬送してから数時間でみるみるうちに悪化し、すぐに人工呼吸器装着が必要になりました。

 

なんとか救わなければならない、しかし、治療法が限られていてそれ以上の手がない。一時は生死をさまよいましたが、見事回復を果たし、無事退院していきました。

 

その間、約1ヶ月でしたが、常にその患者さんの病状が急変しないか、いつ病院から急変の呼び出しがくるか、など片時も頭から離れずに不眠の日々が続きました。

 

患者さんは土日も休みはありません、ましてや生死をさまよう病状です。1日たりとも休みはありませんでした。それでもなんとか退院まで回復し、無事救命できた安堵感とともに気が抜けたような疲労感を感じました。とはいえすぐに不眠は解消されませんでした。その後、一時コロナは収束したように思えました。

コロナの再来

その後もコロナ患者は、途切れることはありませんでしたが、逼迫することなく経過し、日常生活では過度な不眠もなくなりました。しかし、突然、第2波が、そして立て続きに第3波が訪れました。患者も急増し、不足する医療物資と感染リスクとが隣り合わせの生活が再開しました。

 

当時は院内発生なども起こり、濃厚接触になると14日間の自宅待機、もちろん隔離する場所もなく、自宅に同居家族がいても部屋に閉じこもることぐらいしかできません。

 

医療従事者とはいえ、自宅では共有スペースもあるため、完全な感染対策は難しいのです。そんな矢先、ついに自分も濃厚接触となってしまいました。当然、PCR検査を受けるわけですが、結果が出る間、もし感染したら、家族に感染させたらと思うと、PCRを採取した日の夜はほぼ眠れませんでした。

 

幸い、PCRは陰性でしたが、それは今後発症しないことを意味するわけではありません。終わらない日々との闘いが続き、中途覚醒など不眠は続きました。

身体と心の健康から不眠を克服へ

そんな中、少しでも自分の心に安らぎを与えてくれるのは家族の存在でした。まだ幼い2人の子供の笑顔や妻の気遣いなど、この時ほど家族のありがたみを感じたことはありませんでした。

 

そんな家族の支えによる心の安定が徐々に得られ、また、たまたま購入した枕がより心地よい入眠を促したのか、徐々に不眠の頻度が減少しました。さらにお互いの運動不足を解消するために、ニンテンドースイッチのリングフィットを購入して始めました。すると、過度な運動ではありませんが、ほどよく身体に疲労感と充実感を与えてくれました。

 

また、リングフィットをしながら妻の作ってくれるスムージーを飲んで健康的になったような気がして、徐々に夜も熟眠感を得られるようになりました。仕事の疲労ではなく、ほどよい運動により、心地よい疲労がもたらす眠気はとても良いものでした。

 

このように家族の支えから心の健康とほどよい運動による身体の健康から、また新調した枕の影響もあって、不眠を克服して熟眠感を得ることができるようになりました。やはり、身体と心の健康が大切であり、そのためには周囲の人間関係や、ほどよい運動習慣などが大切になると思います。

コロナで不眠に苦しむみなさん

医療従事者でもそうでなくても、いまはどんな環境でも感染しうる状況です。コロナの影響で給料が減ってしまったり、生活が困難となってしまう人もいます。

 

また、休日もどこかへ出かけたり、おいしいものを食べに行ったりという、これまで当たり前の日常がすっかり変わってしまいました。そのような状況から不眠になってしまう方もいるかもしれません。それでもあなたの周りには家族、友人、その他多くの信頼できる大切な人の存在があると思います。

 

そして何かきっかけ1つで不眠を克服できるかもしれません。それは周囲の大切な人かもしれませんし、何か新たな行動がきっかけかもしれません。今はみんながつらい思いをしていますが、うまく乗り越えて健康的な睡眠を維持しましょう。私も現場から逃げずに戦います。この記事が皆様のお役に立てたら幸いです。

この記事を書いた人

SLEEP BASE MAGAZINE 編集部

編集長の安田 信達です。「快眠器具」を開発研究しています。趣味は「運動」です。筋トレにはまっています。自分自身の体験も活かしながら「睡眠」と「運動」の関係を日々研究することに励んでいます。


副編集長の安田 明道です。眠りがいかに大切なものかをご理解頂くと共に、睡眠に悩む方々に”楽しい眠り”をご提供させていただきます。

SLEEPBASE MAGAZINEが、読者様の睡眠を豊かにすることにお役にたてたら幸いです。
編集部一同 https://sleepbase.jp

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